第12回 テーラー
テーラー (1856~1915)
デミング賞のデミング博士は、日本に来て「アメリカ人は品質管理を分っとらん!」と怒った。テーラーが提唱した「科学的管理法」も発表当時は同様の運命だったようだ。
「科学的管理法」で呼ばれるテーラー・システムは、大量生産管理のフォード・システムと並び工場経営の典型とされている。フォード・システムがどちらかといえば機械の流れに人間を合わせることで合理化を成し遂げようとしたのに対し、テーラーは機械よりも先ずそれを動かす人間の仕事量で最大の効率を上げるには作業をどのように標準化すべきかと考えた。そのため作業要素をバラバラに分解し、それぞれの要素にかかる時間を分析するいわゆる「時間研究」の手法を理論化した。
しかし、資本家と労働者の対立が激しかった当時のアメリカでは、サボタージュが労働者の重要な対抗手段であったため「時間研究」を強いるテーラー理論の実践に際しては各工場で大きな抵抗が起こった。それはテーラーの死後も続いたが、いざ実施してみると生産性が大幅に向上し労働者の収入も上がることが分かったので、組合幹部もやがて理解を示すようになったのである。
最近知った話ではあるが、首都圏のあるスーパーマーケットではこの「科学的管理法」を、なんと生鮮食品の管理に導入して大きな成果を上げているという。テーラーが生きていたら、デミング博士ならずともこの日本人の驚くべき応用力を見てきっと喜んだに違いない。