第64回 デュポア
デュポア (1858~1940)
もし、ピースが揃っていないジグソーパズルを作ることになったとしたら、ある程度絵が見えてきた所で、足りないピースを探さなくてはならない。人類の進化というパズルを作ろうとした時、欠けているピースは世界中に散らばっていた。
ダーウィンの進化論以降、多くの研究者が人類誕生の謎に挑んだ。ドイツの博物学者ヘッケルは、類人猿と人間との間に「失われた環」がやがて必ず見つかると考えていた。彼の考えは的中し、1856年にドイツの渓谷から「失われた環」の一つが見つかった。世に言う「ネアンデルタール人」である。
オランダに生まれたユージン・デュポアもまたそのような骨を発掘したいと考えていたひとりである。彼は軍医として渡ったジャワ島で発掘を行い、開始から4年後、ついに類人猿に似た頭蓋骨と、人間に似た大腿骨を掘り出す。しかしこの成果が発表されると、彼は学者達から猛反発を買った。当時人類の先祖は、彼の発見とは逆に「人間の脳と類人猿の身体」を持った生物だと考えられていたからである。が、研究が進むうちに、同様の骨が各地で続々と発掘されたため、彼の説が正しいことが後に証明された。ジャワ島で発見された骨は、今では「ジャワ原人」と呼ばれている。
デュポアが発見した貴重なピースによって、人類の進化というパズルのあらかたが組み立てられた。だが、このパズルのピースのいくつかは、今もどこかで出番を待っているに違いない。