第31回 関孝和
関孝和 (1642?~1708)
関孝和は江戸時代に活躍した、日本が誇る数学者(和算家)である。彼はそれまでの算木による代数学を大幅に改良、記号を使う筆算式の数学を独自につくりだした。それは現代の代数学と同じ方程式の書き方(記号法)に通じるものでありこれによって和算は飛躍的な発展をみた。
彼はまず連立二元一次方程式の解を求める公式を生みだし、これを多元に広げて行く過程で今日の行列式の考えにたどりついた。これはヨーロッパに先立つこと二百年前である。さらにn次方程式の近似的な解を求める方法を孝案。これは孝和に約百年遅れてイギリスのホーナーが発表した方法と同じである。また円に内接する正多角形の辺の長さを求める公式(角術)を得てこれをホーナーの方法を使って解き11桁まで正しい円周率を計算している。
ニュートンと同時代に日本でもこのような高度な数学が確立されていたことに驚くと同時に、今日その業績が殆ど忘れられてしまっていることに疑問を抱かれるのではなかろうか。和算はなぜ滅びてしまったのか。それはあまりにも実用一点張りだったからだといわれている。和算のねらいは実用と計算術そのものにあった。ためにそこから進んで数や図形、さらにニュートンのように運動の本質や法則を研究しなかった。せっかく獲得した手段を次の大きな目的に向かって活かすことで、発展させていくことができなかったのである。