第33回 ブンゼン
ブンゼン (1811~1899)
フンゼンと聞けば、化学実験室にあるブンゼン灯をすぐに思いだされる人も多いであろう。ブンゼンは生涯に数々の役に立つ実験機器を発明したが、ブンゼン灯もそのひとつであった。
ブンゼン灯が無色であったことからそれはまず炎色分析に使用された。金属や塩を炎のなかに入れると炎がその金属固有の色を示す。この性質を使って、いろいろな元素の定性や微量分析が行なわれた。この実験はやがてハイデルベルク大学の同僚であったキルヒホフの勧めによってスペクトルそのものの分析へと発展していった。ブンゼンは新たに分光器を発明し、キルヒホフと共同で様々な物質のスペクトル分析を試みた。これらの結果、フラウンホーファーが1814年に発見した太陽スペクトル中の暗線の秘密が解かれた。
これは後々の重要な発見であった。これによって人類は地球だけでなく、他の恒星や星雲などを含む全宇宙の化学分析をする方法を手にしたからである。実際、ヘリウムかこうして見つけられた。しかし、後世に多大の貢献をしたこの分析手法もブンゼンには皮肉な結果をもたらしたようだ。希土類元素のスペクトル分析に打ち込みやっと完成させた研究書類を、机に置いた水入りフラスコのレンズのいたずらによって焼失してしまうのである。落胆のあまり、ブンゼンはこれ以後、スペクトルの研究から遠ざかったといわれている。