第26回 グーテンベルク
グーテンベルク (1394?~1468)
毎年10月、世界最大のブックフェアがドイツの都市フランクフルトで開かれる。この町で最初の見本市が開かれたのは、今から5百年以上前の1462年。グーテンベルクによる活版印刷の発明がそのきっかけである。
グーテンベルクは、フランクフルトの隣町マインツで生まれた。成人してからの職業は警察官であったがやがて印刷に興味を抱き、当時の印刷手法であった版画印刷事業に手を染めるようになった。しかし彼はそれに満足することなく、次に「機械的文字」を使うまったく新しい印刷技術の構想を思い立った。彼が考えた「機械的文字」とは現在でいうところの「活字」にあたる。「活字」は組み合わされて単語を形成し、単語が一枚のぺージをつくる。一枚のぺージの印刷が終ると、「活字」は組み直され別のぺージの印刷に再び使われた。すなわちそこには、文字のユニット化というアイデアによる、システム思考が構築されていたのである。
このことの意義はすこぶる大きい。それは単に印刷技術を普遍化、合理化したということにとどまらず、印刷物を通じて大勢の離れた人ともコミュニケーションできるという、いわば「距離の文化」というものを大きく花開かせることになったのである。今日の情報社会の発展を考える時、その出発点はまさにこの「活字」の登場にあったと言っても過言ではないだろう。