第52回 ピカール
ピカール (1884~1962)
偉大な発明家は、自分の考えを人々に認めさせるために、時として自分の身を危険にさらすこともある。気球に乗って人類で初めて成層圏に達したオーギュスト・ピカールは危検を背負いながら見事に自分の主張を証明した人物である。
ピカールは子供の頃から空飛ぶことを夢見ていた。気球操縦の免許をとった被は双子の兄弟とともに滞空飛行記録をつくり、その後、気球を利用した種々の科学実験を繰り返していた。その頃彼は人間が将来高さ1万メートルよりも上にある成層圏を飛ぶことになるだろうと考えていた。今や現実のものとなった彼のこの考えを当時の人々に納得させるには、実察に成層圏まで上がっていって、そこでの低温や酸素の欠乏に人間が耐えられることを証明する必要があった。そこで彼は自らが設計した気球に乗り込み、高度1万5780メートルまで上がる有人気球飛行記録をつくることに成功した。ところがこの飛行は実に困難なものであった。成層圏に達した彼の気球は空気漏れを起こすなど様々なトラブルに見舞われ、そして17時間もの間漂流したのち無事に生還したのだった。
その後ピカールは生涯に27回もの気球飛行を体験した。そんな彼の次のターゲットは深海探索であった。彼が設計した深海潜水艇は彼の息子の操縦によって潜水深度記録をつくりあげた。
こうしてまた未知の世界がひとつ彼の挑戦によって証明されたのである。