第19回 ノイマン
ノイマン (1903~1957)
1946年、電子管リレー方式による世界初の電子計算機「ENIAC」が誕生した。しかしこの計算機はプログラムが変るたびにコントロールパネルの配線替えをしなければならず、莫大な時間と労力を必要とした。それを、プログラム内蔵方式を考案し今日使われているような姿に改良したのが、二十世紀最高の数学者のひとりと呼ばれる、ジョン・フォン・ノイマンその人である。
彼はハンガリー生まれのユダヤ人で、その名が示すとおり家は貴族の称号を持つ裕福な家庭だった。そうした環境で育った彼もまた、ウィーナーと同じく天才であった。17歳で数学に関する最初の論文を発表した彼は、高等学校を卒業するときにはすでに一流の数学者として世の中に認められていた。しかし同時代のユダヤ人科学者が皆そうであったように、彼もまたヨーロッパを離れアメリカヘと渡った。
ところでウィーナーがなかなか世に出られなかったように、当時のアメリカは経済恐慌のあらしが吹き荒れていたときで、科学者といえども移住者はそう簡単には職にありつけなかった。だがノイマンはすぐに職を得、その後も比較的安定した生活を送ることができた。それは、彼が歴史に人一倍の興味を持っていたからだといわれている。そのことが時代の推移に対する鋭い洞察力を育て、自身を安全な方向へといちはやく対処させる結果を生んだのである。