第17回ワトソン
ワトソン (1874~1956)
「THINK」それは現在もコンピユータ業界の巨人、IBMの伝統的スローガンとなっている。この言葉はIBMの創立者であったワトソンが、ある販売会議の席上で黒板に書きつけたものである。「どんなことでもよく考えてするように」ワトソンの実業家としての心の支えはこれに集約されていた。
彼がIBMの最高責任者に昇りつめたのは50歳になってである。経営者としてのワトソンは、それまでの機械産業が常識としていた販売方法を見直し、レンタル制度の導入や、セールスマンと修理技術者の分離を行うなど今日多くのメーカーが採っている販売戦略のモデルをつくった。また、社内の教育、モラールアップ、従業員に対する保障制度の確立などの点でも多大の貢献をした。これらはすべて、下積み時代の長い体験を経て考えだされたものである。
ワトソンが青年期を生きた時代は、セールスマンかまだ馬車に商品を乗せ各地を売り歩いていた。セールスマンたちのモラールは一様に低く売りっぱなしにするのか当たり前であった。彼はそのような時代にセールスの助手を手始めにして、これらに疑問を抱きながら実業家としての解を求めていったのである。「知恵を絞り出して考えていないことが、私たちにとって一番大切な問題なのです。私たちは足を使って働くのではなく頭を使って働くことによって給料を得なければなりません」彼はそう語っている。