第53回 マイケルソン
マイケルソン (1852~1931)
現代に残る世紀の大発見や理論は、それ以前の人たちの実験や研究をヒントに築き上げられたものも多い。アメリカの物理学者アルバート・マイケルソンの明らかにした「光速度不変の原理」はアインシュタインの相対性理論の基礎となるものであった。
マイケルソンの研究の出発点は光の速度の測定だった。彼は光の速度の測定実験を重ねるうちにもう一つの問題に興味を持つようになっていた。時速200キロメートルで東向きに走る新幹線の速度を時速50キロメートルで西向きに走る車から測定すると速度は250キロメートルになる。このような速度の加法定理は常識のものであった。マイケルソンはかって同じ大学の教授を勤めたエドワード・モーリーと共同して、光についてはこの速度の加法定理が成り立たないことを明らかにした。これが有名なマイケルソン・モーリーの実験である。この実験で一番重要な役割を果たしたのは干渉計であった。マイケルソンの干渉計の精度は非常に高く、100メートル先を人が歩くとその振動で実験がダメになるほどであった。この干渉計の精度が十分に高いものでなければ彼らの研究を人々に納得させることができながったであろう。
こうしてマイケルソンは、同じ干渉計を使って高速度不変の法則を明らかにし、国際的な長さの基準をつくり、星の大きさや地球の固さを決めた。こうしたマイケルソンの数々の業績は、近代物理学に深い影響を与え続けている。